▲1/2■フォント環境を揃える 以前、フォントは一点一点パッケージ販売されていました。制作会社や印刷会社は、各社それぞれにフォント見本帳を用意し、所有フォントが多いことは会社のアピールポイントでもあったのです。 現在では、フォントはモリサワやフォントワークスなどの大手フォントメーカーからサブスクリプション形式で購入することが一般的になっています。年間契約することでほぼすべてのフォントが使用できるようになるため、印刷物の製造に関わるデザイン、組版、製版といった各工程のフォント環境を一様に揃えることが容易になりました。 ですが、大手メーカー以外にも数多くのフォントメーカーが存在しており、様々なフォントを販売しています。コンテンツのイメージに合った個性的なフォントを使いたい、そのようなデザイナーや編集者のニーズに支えられている人気フォントも、その中には少なくありません。 もし使いたいフォントを制作会社や印刷会社が所有していない場合、対応方法は下図のようになります。 印刷会社に当該フォントがなくても、制作会社で完成したデータからPDF/Xを書き出せば、印刷は可能です。フォントのトラブルを避けるため、PDF/X形式での入稿を希望する印刷会社もあります。 制作会社にもフォントがない場合は、デザイナーが文字を画像(アウトライン)化することで解決できます。ただし、アウトライン化してしまうと制作会社でその文字を修正できなくなってしまうので、使用頻度の低い見出しなどであればともかく、本文書体すべてをアウトライン化するのは現実的ではありません。特殊なフォントを使う際は、やはり事前に後工程の担当者とすり合わせをしておくことをお勧めします。■フォントの権利関係 当然のことですが、商品であるフォントを使用できるのはその購入者だけです。フォントデータを第三者に渡すことは多くの場合禁じられています。 反面、インターネット上では多くのフリーフォントが配信されています。様々なフォントが簡単に、しかも無料でダウンロードできるのですから使いたくなるのも無理はありません。しかし、最近ではフリーフォントによるトラブルが増えてきています。 フォントは著作物であり、著作権者によりその利用規約が厳しく定義されています。フリーフォントといえど利用規約の範囲を超えて使用すると使用料等が発生します。書籍を作って販売するのは許諾範囲内だが電子化など二次利用は許可していない、印刷物で使用する場合にはクレジットを入れるなど、それらの条件の確認を怠ると後々トラブルになる可能性があります。 さらに気をつけなければならないのは、その規約を著作者が任意に変更できるということです。制作した出版物やウェブサイトが、知らぬ間に規約違反の状態になってしまう恐れがあるのです。 フリーフォントの「フリー」とはダウンロードが無料という意味であって、自由に制限なく使えるという意味ではないことを理解しておく必要があります。■バージョンの問題 各工程で同じフォントを持っていればそれで問題がないかというと、そう簡単でもありません。 フォントは必要に応じて改変が加えられます。それがバージョンの違いです。フォント名が同じでもバージョンの違いにより、収録字数や字形、字詰めが変化デザイナー制作会社印刷会社フォント有フォント有フォント有OK(対応不要)フォント有フォント有フォント無制作会社でPDF/X書き出しフォント有フォント無フォント無デザイナーがアウトライン化対応方法http://www.meisho-do.co.jpMeisho-do Creative Report Vol.55September 01 ,2020書体(フォント)デザインは出版コンテンツにおける重要な要素です。フォントに関する昨今の動向や注意点についてご案内いたします。デザイン・組版の専門業者である当社の制作現場から、フォント使用上の注意
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